実家の登記簿を見たら、祖父母の名前のままだった――そんな経験はありませんか?
実家を売ろうとして登記簿(登記事項証明書)を取り寄せてみたら、所有者の名前が「亡くなった親」ではなく、さらにその前の世代である祖父母や曽祖父母のままだった――。実はこうした相談は少なくありません。相続の手続き(遺産分割や登記)が終わらないうちに、相続人自身がさらに亡くなってしまい、相続が二重・三重に重なってしまう状態を「数次相続(すうじそうぞく)」と呼びます。この記事では、数次相続の基本的な仕組みと、放置するとなぜ実家が売れなくなっていくのか、そして今からできる対処法を分かりやすく解説します。

実家の登記簿を取ってみたら、亡くなった父ではなく、祖父の名前のままだったんです…。これって普通にあることなんでしょうか?

実はよくあるご相談です。祖父の代の相続手続きが終わらないうちに、お父様も亡くなってしまった――というケースですね。今日はこの「数次相続」について、放置するとどうなるのか、一緒に整理していきましょう。
そもそも「数次相続」とは?放置すると何が起きるのか
数次相続とは、ある人が亡くなって相続(一次相続)が始まったあと、その遺産分割協議や相続登記が終わらないうちに、相続人のうちの一人がさらに亡くなり、次の相続(二次相続)が重ねて発生する状態を指します。祖父が亡くなり、その相続手続きが済まないうちに父も亡くなった、というケースがまさにこれにあたります。三代、四代と手続きが放置されれば、三次相続・四次相続と重なっていくこともあります。
数次相続がやっかいなのは、相続のたびに相続人の数が増えていく点です。最初は配偶者と子ども数人だった相続人が、次の世代に代替わりするごとに、その子ども(孫・甥姪にあたる人)にも相続権が広がっていきます。何世代も手続きをしないまま放置すると、相続人が全国に散らばり、面識のない親戚同士で遺産分割協議をしなければならない状況になることも珍しくありません(※具体的に相続人が何人に増えるかはご家庭の人数構成によって大きく異なるため、一般論としてご理解ください)。不動産を売却するには、原則として相続人全員の合意が必要になるため、相続人が増えるほど、意思統一そのものが難しくなっていきます。

うちは祖父の代からなので、もしかしたら会ったこともない親戚とも話し合いが必要になるかもしれません…。早めに動いた方がよさそうですね。

そのとおりです。しかも今は、放置していることそのものが法律上のリスクにもなっています。次はそのお話をしますね。
実家が今どのくらいの価格で売れそうかを早い段階で把握しておくことは、相続人同士の話し合いを進めるうえでも大きな助けになります。気になる方は、まず価格帯だけでも確認してみるのも一つの方法です。
相続登記の義務化で、数次相続の放置は”過料”のリスクに
2024年4月1日から、相続登記(不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する登記)が法律上の義務になりました。これは今回のケースのように、相続が何代も前から発生している、いわゆる経過措置の対象となる相続にもあてはまります。経過措置の対象となる相続は2027年3月31日までに相続登記を申請する必要があり、正当な理由なく期限内に申請しないと10万円以下の過料の対象となる可能性があります。数次相続のように相続人が多数にのぼる場合、相続人一人ひとりがこの義務の対象になり得る点にも注意が必要です。
「相続人全員の合意が取れるまで登記できない」という場合のために、相続人の一人が法務局へ申し出るだけで義務を暫定的に果たせる相続人申告登記という簡易な制度も用意されています。ただし、これはあくまで過料を回避するための暫定的な手続きであり、不動産を売却するための名義変更そのものではありません。相続登記や相続人申告登記の具体的な仕組みについては、以前の記事「実家の登記簿、住所は最新ですか?2026年4月から始まった新ルールが売却の壁になるかもしれません」でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。また、相続に関する手続きを先延ばしにすることで生じる別の過料リスクについては、「実家を解体したら手続きは終わり?「建物滅失登記」を忘れると過料10万円のおそれも」でも触れています。

祖父の代からの相続なのですが、過料の対象になってしまうんでしょうか…?

経過措置の対象になりますので、期限内の対応が必要です。ただ、焦って自己判断で進めるより、まずは今の状況を専門家に整理してもらうのが近道です。次は実際の進め方を見ていきましょう。
数次相続が起きた実家を売るための進め方
数次相続が発生している実家を売却するまでの大まかな流れは、次のようになります。
- 戸籍謄本を集めて相続人を確定する:亡くなった祖父母・父母それぞれの出生から死亡までの戸籍謄本をたどり、現時点での相続人を一人ずつ確定します。世代が重なるほど必要な戸籍の数も増え、時間がかかりやすい工程です。
- 遺産分割協議を行う:確定した相続人全員で、実家をどうするか(売却する、誰かが引き継ぐ等)を話し合います。面識のない親戚が含まれる場合は、手紙や専門家を介した連絡から始めることになります。
- 相続登記(または相続人申告登記)を申請する:協議がまとまれば相続登記を行い、名義を現在の相続人へ変更します。まとまるまでに時間がかかりそうな場合は、ひとまず相続人申告登記で過料を回避しておく方法もあります。
- 売却活動を始める:名義変更(または売却のための準備)が整った段階で、不動産会社に相談し、実家の売却を進めます。
なお、相続人の中に行方が分からない方や、連絡が取れない方がいる場合は、数次相続の手続きがさらに複雑になります。こうしたケースの対処法については、「実家の共有者と連絡が取れない…それでも売却できる?2023年民法改正の新制度」でも詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

戸籍を集めるだけでもかなり大変そうですね…。自分たちだけで進めるのは不安です。

戸籍の収集や遺産分割協議書の作成は、司法書士や弁護士といった専門家に依頼できます。不動産会社に相談いただければ、提携する専門家をご案内することも可能ですので、お一人で抱え込まずにご相談ください。
まとめ:世代をまたぐ相続ほど、早めの着手が肝心です
数次相続は、放置すればするほど相続人の数が増え、手続きも話し合いも難しくなっていきます。さらに2024年4月1日からの相続登記義務化により、経過措置の対象となる相続も2027年3月31日までに対応しなければ過料の対象となり得ます。「うちはどこまで手続きが進んでいるのか分からない」という状態であれば、まずは戸籍の確認や専門家への相談から始めてみましょう。あわせて、実家が今どのくらいの価格で売れるのかを無料査定で把握しておくと、相続人同士の話し合いもぐっと進めやすくなります。
※本記事の内容は法務省が公表する相続登記の義務化に関する解説資料を参考にしています。
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