「実家の相続人が複数いて、まだ誰が引き継ぐか決まっていない」——そんな状態のまま、毎年のように固定資産税(土地や建物にかかる税金)の通知書が届いて困っている方は少なくありません。「分割が決まっていないのに、誰が払えばいいの?」「立て替えたら、あとで他の相続人に返してもらえるの?」という疑問は、相続が発生した家庭の多くが一度は抱く悩みです。この記事では、遺産分割(相続人同士で誰が何を引き継ぐかを話し合って決めること)が終わるまでの固定資産税の負担のしくみと、トラブルを避けるために今からできることを分かりやすく解説します。

実家を兄と私で相続したのですが、まだ分割の話し合いが終わっていなくて…今年も固定資産税の通知が届いたんですが、これってどちらが払うものなんでしょうか?

分割が決まっていない間は、実はご兄妹お二人とも納税義務を負うことになるんです。今日はそのしくみと、揉めないためのポイントを一緒に確認していきましょう。
そもそも、分割が決まるまで実家は”誰のもの”?
相続が始まると、遺産(実家の土地や建物を含む相続財産全体)は、遺産分割が成立するまでの間、相続人全員の共有(一人のものではなく、複数人が共同で所有している状態)になります(民法898条)。これは相続人が2人でも5人でも変わりません。たとえ「実家には長男が住み続けるつもりだ」「将来的には売却する予定だ」といった方針が家族の間であったとしても、正式に遺産分割協議(相続人全員で話し合い、誰が何を取得するかを決める手続き)が成立するまでは、法律上は全員の共有物として扱われます。
なぜ相続人全員に納税義務があるのか——”連帯納付義務”のしくみ
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)時点の所有者に対して課税されます。相続が発生していても遺産分割が済んでいない場合、1月1日時点の”所有者”は相続人全員ということになり、納税義務もまた相続人全員に生じます。地方税法10条の2には、共有物にかかる税金は共有者が連帯して納付する義務を負うと定められており、これは相続によって実家を共有している相続人にも当てはまります。「連帯して」とは、相続人の誰か一人に全額を請求することも、全員にそれぞれ全額を請求することも、法律上は可能だという意味です。相続人の人数で単純に割った金額だけを払えばよい、というわけではない点に注意が必要です。

連帯ってことは、もし私が何も知らずに放っておいたら、兄に全額請求されてしまうこともあるんですか?

制度の上ではそれもあり得ます。だからこそ、自治体への届け出や相続人同士の早めの話し合いが大切になってくるんです。
自治体に”代表者”を届け出ても、義務は全員に残る
多くの自治体では、相続人が複数いる場合に「現所有者申告書」などの書類で、納税通知書の送付先となる代表相続人を届け出る仕組みを設けています。これは、自治体が納税通知書を送る宛先を一本化するための実務上の手続きであり、代表者を決めたからといって、他の相続人の納税義務そのものがなくなるわけではありません。あくまで連絡・請求の窓口を一人にまとめているだけで、法的な連帯納付義務は変わらず相続人全員に残ります。なお、遺産分割が成立し相続登記(不動産の名義を正式な相続人に変更する手続き)が完了すると、以後は登記簿上の新しい所有者だけが納税義務者になります。相続登記には申請の期限が設けられていますので、まだ済んでいない方は以前の記事「実家の相続登記、まだ済んでいませんか?義務化の猶予期限が目前に迫っています」もあわせてご確認ください。
代表相続人が立て替えたら、ほかの相続人に請求できる?
「とりあえず自分が立て替えて払っておこう」というケースも多いですが、その後、他の相続人に請求することは可能です。民法253条1項では、共有物の管理にかかる費用(固定資産税もこれに含まれると考えられています)は、各共有者がその持分(遺産分割前であれば、法律上定められた相続分)に応じて負担するとされています。そのため、立て替えた相続人は、後から他の相続人に対して、相続分に応じた金額の償還(支払った分を返してもらうこと)を求めることができます。ただし、支払う前に「先に自分の分を払っておいて」と前もって請求することはできず、あくまで立て替えて支払った後に請求する形になります。相続人同士の関係が良好でない場合、この償還を巡って話がこじれることもあり、合意できなければ最終的に裁判での解決が必要になるケースもあります。

うちは兄弟3人で実家を相続したのですが、正直、誰がいくら払っているのか把握できていなくて…。

それはよくあるお悩みです。立て替えた分の記録を残しておくことと、早めに分割の方向性を決めておくことが、後々のトラブルを防ぐ一番の近道ですね。
揉める前にできること——早めの分割と、実家の”今の価値”を知っておく
固定資産税の負担トラブルを防ぐには、まず遺産分割協議書(話し合いの内容を記録した書面)に、固定資産税などの管理費用をどう負担するかを明記しておくことが有効です。立て替えの事実や金額をメモや領収書で記録として残しておくだけでも、後の「言った・言わない」のトラブルを大きく減らせます。また、実家を誰がどのように引き継ぐかで話し合いが長引いている場合、そもそも実家にどれくらいの価値があるのかがわからないままでは、公平な分け方の議論も進みにくくなります。一人だけが実家を引き継ぐ代わりに他の相続人へお金を支払う「代償分割」(実家を物理的に分けられない代わりに、現金で公平に調整する方法)を検討する場合も、まずは実家の価格の目安を知っておくことが話し合いの土台になります。代償分割の決め方については、以前の記事「実家を兄弟の一人だけが引き継ぐには?”代償分割”の決め方と代償金が払えない時の対処法」でも詳しく解説しています。すでに共有名義のまま実家の売却を検討している方は、「共有名義の実家、兄弟の同意が得られない…自分の持分だけを売ることはできる?」も参考になります。
まとめ:”誰が払うか”は共有者全員の問題と心得て、早めに整理を
遺産分割が終わるまでの固定資産税は、相続人全員が連帯して負担する義務を負います。代表者を届け出ても、この義務そのものはなくならないため、「自分には関係ない」と考えず、相続人同士で早めに情報を共有しておくことが大切です。立て替えが発生した場合は、後から相続分に応じた請求ができるとはいえ、記録を残しておかないと言い分が食い違い、トラブルに発展しかねません。実家の取り扱いに迷っている場合は、まずは現状の価値を把握し、分割の話し合いを前に進めるための材料をそろえておくことをおすすめします。
※本記事の内容は前橋市・箕面市等の固定資産税に関する案内および法律事務所の解説記事(いずれも2026年10月時点の公開情報)を参考にしています。
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