相続した実家が”所有者不明建物”になったら売れない?2023年民法改正の新しい解決策とは

相続した実家が所有者不明建物?権利関係・境界トラブル

実家の相続人、本当に全員わかっていますか?

実家を相続したものの、名義変更(相続登記:不動産の名義を正式な相続人に変更する手続き)を後回しにしているうちに、次の世代への相続が重なる、いわゆる「数次相続」(最初の相続人が亡くなり、さらに次の世代が相続人になること)が起こり、「結局、誰が正式な所有者なのか」があいまいになってしまうケースが増えています。長年放置された実家では、相続人の人数自体が把握できなくなったり、連絡の取れない相続人が出てきたりすることも珍しくありません。

こうした状態が行き着く先にあるのが、民法上の「所有者不明建物」です。所有者もその所在もわからないと判断されると、通常の売却手続きがそのままでは進められなくなってしまいます。この記事では、2023年の民法改正で新設された「所有者不明建物管理制度」のしくみと、実家をそうならないようにするためにできることを解説します。

実家の相続人、正直何人いるのか私もよくわかっていません…。こんな状態でも売却はできますか?

こだせんせい
こだせんせい

相続登記を済ませずに世代をまたいでしまうと、相続人の数がどんどん増えて収拾がつかなくなることがあります。今日は「所有者不明建物」という制度を中心に、実家をそうならないようにする方法を一緒に確認していきましょう。

「所有者不明建物」とは?実家が”持ち主がわからない家”になる理由

「所有者不明建物」とは、民法264条の8で新たに定められた制度上の呼び方で、建物の所有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない状態の建物を指します。2023年4月1日に施行された民法改正で新設されました。

実家がこの状態に陥る典型的なきっかけが、相続登記をしないまま何世代も相続が重なってしまう「数次相続」です。数次相続について詳しくは「実家の登記簿が祖父母の名義のまま?”数次相続”を放置すると売れなくなる理由とは」でも解説しています。相続人の数が増え続け、連絡先も把握できない人が出てくると、法律上「所有者を知ることができない建物」と判断されてしまう可能性があります。

なお、2024年4月1日からは相続登記が義務化されており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年の施行より前に相続していた人向けの経過措置の申請期限は2027年3月31日までとなっており、期限が近づいています。詳しくは「実家の相続登記、まだ済んでいませんか?義務化の猶予期限が目前に迫っています」をご覧ください。相続登記を早めに済ませておくことは、実家が所有者不明建物になることを防ぐ最も基本的な対策でもあります。

うちの実家、祖父の名義のままなんです…これも所有者不明建物になってしまう可能性があるんですか?

こだせんせい
こだせんせい

現時点で相続人が特定できていれば、すぐに所有者不明と判断されるわけではありません。ただ、放置する期間が長引くほどリスクは高まります。早めに相続登記を済ませておくことをおすすめします。

所有者不明建物管理制度のしくみ:誰が申し立て、何ができるのか

実家が実際に所有者不明建物と判断された場合、所有者に代わって建物を管理・処分するための「所有者不明建物管理制度」を使うことができます。

この制度は、自治体や近隣住民、購入希望者など利害関係のある人が、建物のある場所を管轄する地方裁判所に申し立てることで始まります。裁判所が必要と認めると、弁護士などが「所有者不明建物管理人」として選任され、建物の管理を担います。管理人が建物を売却する場合は、別途裁判所の許可が必要であり、売却価格が適正かどうかなども裁判所がチェックします。つまり、申立人の希望どおりに必ず売却が進むとは限りません。

申立てにかかる費用としては、不動産1個につき申立手数料1,000円、郵便切手代6,150円、管理命令が出た後の登録免許税(不動産価格の1,000分の4)などが必要です。さらに、管理人の活動費用にあてる予納金も求められますが、具体的な金額は事案ごとに裁判所が算出するため、申立ての段階で見積もりを求められることがあります。

実際の活用例として、東京都日野市では2023年6月13日に所有者不明の空き家(築約50年の木造住宅)について申立てを行い、同年10月27日に弁護士が管理人として選任されました。全国で6件目、都内の自治体としては初めての事例と報じられています。申立てから管理人の選任まで、約4カ月半かかったことになります。

自分で勝手に「所有者不明」と決めて売ってしまうことはできないんですね…。

こだせんせい
こだせんせい

そうです。あくまで裁判所が判断し、管理人を通して進める手続きです。時間もコストもかかるため、”そうなる前”に対策しておくほうが現実的です。

共有名義で連絡が取れない場合との違い

似たしくみとして、2023年の民法改正では「所在等不明共有者」の制度も新設されています。これは、実家が複数人の共有名義になっていて、そのうち一部の共有者とだけ連絡が取れない場合に使える制度です。詳しくは「実家の共有者と連絡が取れない…それでも売却できる?2023年民法改正の新制度」をご覧ください。

一方、今回ご紹介した所有者不明建物管理制度は、共有者の一部が不明というレベルではなく、建物の所有者そのものが誰なのか、またその所在そのものがわからないという、より深刻な状態を想定した制度です。実家が今どちらの状態に近いのかを見極めることが、適切な対応を選ぶ第一歩になります。

まとめ:売れなくなる前にできることを

実家が「所有者不明建物」になってしまうと、裁判所への申立てや管理人の選任など、時間もお金もかかる手続きを経なければ売却に進めません。しかし、こうなる前にできることは明確です。相続登記を早めに済ませておくこと、そして数次相続のように相続人が増え続ける前に、家族で話し合い、必要な手続きを進めておくことです。

「うちの実家は大丈夫だろうか」と不安に感じたら、まずは今の状態を整理してみることをおすすめします。査定を通じて実家の価値や売却の選択肢を知っておくことも、将来の意思決定の助けになります。

※本記事の内容は法務省が公表する民法改正(所有者不明土地・建物管理制度)の解説、大阪地方裁判所「所有者不明土地・建物管理制度に関するQ&A」、東京都日野市での制度活用事例に関する報道、および相続登記義務化に関する専門家解説記事(いずれも2026年10月時点の公開情報)を参考にしています。

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実家の相続人が増えすぎて収拾がつかなくなりそうで心配です…こんな状態でも査定してもらえますか?

こだせんせい
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