実家の相続税、「物納」で納められる?再建築不可・境界不明の家は却下されやすいって本当?

実家の相続税、物納で納められる?一戸建て査定のポイント

相続税は「モノ」で納められる?実家の相続税、現金の準備に困っていませんか

親が亡くなり実家を相続すると、相続税の申告と納税は、亡くなったことを知った日の翌日から原則10ヶ月以内に済ませる必要があります。しかも、相続税は現金による一括納付が原則です。「実家はあるけれど、まとまった現金がすぐには用意できない」「訳あり物件で、10ヶ月以内に売却できるか分からない」という方も少なくないのではないでしょうか。実は、相続税には現金の代わりに不動産などの財産で納める「物納(ぶつのう)」という制度があります。ただし、この制度には細かな条件があり、特に「訳あり物件」と呼ばれる実家ほど、審査で認められにくい傾向があります。

実家の相続税、思ったより高くて、正直10ヶ月以内に現金で用意できるか不安です…。不動産のまま納められる方法ってあるんですか?

こだせんせい
こだせんせい

それが「物納」ですね。文字どおり、相続税を金銭ではなく不動産などの「モノ」で納める制度です。ただ、誰でも自由に選べるわけではなく、いくつかの条件をクリアする必要があります。順番に見ていきましょう。

気になる方は、実家がどのくらいの価格で売れそうか、まず査定だけでも確認しておくと、物納・延納・売却のどれが現実的か判断しやすくなります。

物納が認められるための3つの条件

物納が認められるには、主に次の3つの条件を満たす必要があります。

  • 延納(分割払い)によっても金銭で納めることが困難であること
  • 相続税の申告期限と同じ原則10ヶ月以内に、物納の申請書類を提出すること
  • 納めようとする不動産が「管理処分不適格財産」に該当しないこと

つまり、物納は現金納付・延納のいずれも難しい場合の最終手段であり、かつ差し出す不動産自体が国にとって管理・処分しやすいものでなければ認められません。この3つ目の条件が、実は「訳あり物件」を相続した方にとって大きなハードルになります。

てっきり、物納は”申請すれば通るもの”だと思っていました…審査で断られることもあるんですね。

こだせんせい
こだせんせい

はい。特に不動産の場合、「管理処分不適格財産」と呼ばれる、国が引き取れない土地・建物の基準が細かく定められています。実は、このサイトでこれまで取り上げてきた「訳あり物件」の多くが、この基準に近いんです。

「訳あり物件」は物納で却下されやすい?管理処分不適格財産の具体例

国税庁の定める管理処分不適格財産には、たとえば次のようなものが挙げられています。

  • 境界が明らかでない土地
  • 担保権の設定登記がされている不動産
  • 権利の帰属について争いがある不動産
  • 他の土地に囲まれて公道にまったく通じない「袋地」で、民法第210条(囲繞地通行権)による通行権の内容(通路の位置・幅員など)が明確でないもの
  • 耐用年数を大幅に超え、通常の使用ができない状態の建物

国税庁「相続税の物納」(タックスアンサーNo.4214)には、次のとおり明記されています。「他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権)の規定による通行権の内容が明確でないもの」。つまりここでいう対象は、単に接道義務(2m以上の間口)を満たさない土地全般ではなく、周囲を完全に他人の土地に囲まれ、公道に出るための通行権の内容(位置・幅員など)自体が確定していない「袋地」に限られます。

  • 管理処分不適格財産(却下):境界不明の土地、および完全な「袋地」で民法210条の囲繞地通行権の内容(位置・幅員など)が確定していないもの ― 該当すると物納そのものが不可
  • 物納劣後財産(優先順位が下がるだけ):建築基準法43条1項の道路に2m以上接していない、いわゆる「再建築不可」の土地 ― 却下ではなく後回し

たとえば、以前の記事「境界標が無い一戸建ては売却できますか?」で解説したような境界不明の土地は、まさにこうした基準に触れやすいケースです。実家が訳あり物件であるほど、物納より先に売却や延納を検討したほうが現実的な場合が多いと言えるでしょう。

うちの実家、隣の土地との境界がはっきりしていないんですが…これも当てはまってしまいますか?

こだせんせい
こだせんせい

境界不明の土地は、管理処分不適格財産の代表的な例です。物納を検討する前に、まずは境界の確認や確定測量を済ませておくことが欠かせません。

「物納劣後財産」ならギリギリ通る?共有名義・事故物件の実家の場合

管理処分不適格財産ほどではないものの、優先順位が下げられる「物納劣後財産」という区分もあります。代表的なものが、建築基準法第43条第1項に規定する道路に2メートル以上接していない土地、つまり以前の記事「実家が「既存不適格建築物」だったら?再建築不可との違いと売却時の注意点」で取り上げたような、いわゆる「再建築不可」の土地です。このほか、建築基準法などの法令に違反した建物や、都市計画区域外で宅地造成が難しい土地なども物納劣後財産に含まれます。再建築不可であることは物納の却下事由そのものではなく、あくまで優先順位が下がるだけである点が、前のセクションの「袋地・通行権不明」との大きな違いです。

※「事件・事故等により正常な取引が行われないおそれがある不動産」も物納劣後財産の一例とされていますが、実家で孤独死などが発生していた場合に必ずこの区分に当たるとは限らず、該当可否は物件ごとの個別判断になります。正確なところは税理士・税務署への確認が必要です。

なお、実家が「共有名義の実家、兄弟の同意が得られない…自分の持分だけを売ることはできる?」のような共有名義になっている場合は、物納の可否以前に、共有者全員の関与が必要になるなど別の手続き上の課題も出てきます。「実家で孤独死が発生したら?事故物件の告知義務と「売買には時効がない」という落とし穴」のようなケースも含め、事情が複雑な実家ほど、事前に専門家へ相談しておくことが大切です。

実家が長らく空き家になっていて、近所でもいろいろ噂になっていて…こういう事情も影響するんでしょうか?

こだせんせい
こだせんせい

直接の事故物件でなくても、事情が複雑な不動産は優先順位が下がりやすい傾向があります。まずは実家の状況を整理して、査定の場で正直に伝えていただくのが一番です。

却下されたらどうなる?延納との関係とタイムリミット

物納の審査には、原則3ヶ月、書類や現地調査の状況によっては最長9ヶ月ほどかかることがあるとされています。仮に物納が却下されても、延納が難しいと判断されれば、あらためて延納に切り替える申請ができます(逆に、延納から物納へ変更する「特定物納」は、申告期限から10年以内に限り認められます)。ただし、相続税の申告・納付期限である10ヶ月を過ぎてしまうと、延滞税などのペナルティが発生するおそれがあります。

審査に何ヶ月もかかるとしたら、実家を売ってでも早めに現金を用意したほうが安心かもしれません…。

こだせんせい
こだせんせい

そう考える方は少なくありません。物納は要件が細かく、時間もかかる制度です。特に訳あり物件を相続された方は、早めに査定を受けて、売却と物納・延納のどちらが現実的かを比較しておくことをおすすめします。

まとめ:物納が難しい実家は、早めの売却も選択肢に

相続税の物納は、現金を用意できないときの心強い選択肢ですが、無条件で使える制度ではありません。境界不明や再建築が難しい土地、権利関係が複雑な実家など、いわゆる「訳あり物件」であるほど、管理処分不適格財産や物納劣後財産に該当しやすく、審査に時間もかかります。相続税の申告期限である10ヶ月は待ってくれません。実家の状態を早めに把握し、物納・延納だけでなく、売却も含めて資金計画を立てておくことが、後悔しないための第一歩になります。

※本記事の内容は国税庁「相続税の物納」(タックスアンサーNo.4214、令和7年9月時点の物納制度の手引き)を参考にしています。

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相続税の納め方だけでなく、実家自体が境界不明だったり再建築不可だったりして、そもそも売れるのか不安です…一度査定をお願いすることはできますか?

こだせんせい
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