実家の土地、気づかないうちに”盛土”の上に建っていませんか?
「相続した実家の裏庭、隣の土地より少し高くなっている気がする」——そんな心当たりはありませんか。かつて造成された土地の中には、周辺から土を盛った”盛土(もりど)”の上に建物が建っているケースが少なくありません。近年、盛土に関するルールが全国で大きく見直され、土地の所有者にも新しい責務が課されるようになりました。この記事では、実家の売却を考えている方に向けて、「盛土規制法」の内容と、売却前に確認しておきたいポイントをわかりやすく解説します。

実は実家の裏庭、隣の土地より1メートルくらい高くなっているんです。これって何か関係あるんでしょうか?

それはまさに今日お話ししたい「盛土規制法」に関わってくるかもしれません。順番に見ていきましょう。
なぜ今、”盛土”が注目されているのか
盛土が全国的に注目されるきっかけとなったのが、2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害です。総務省消防庁の記録によると、この災害では27名が死亡、1名が行方不明となりました。被害拡大の要因の一つとして、造成時の盛土が崩落したことが広く報じられ、これを受けて国は全国一律のルールで危険な盛土を包括的に規制する法整備を進めました。9月は「防災の日」を含む防災月間でもあり、台風や大雨のシーズンと重なることから、自治体でも改めて盛土の注意喚起が行われやすい時期です。実家のような古い造成地を所有・相続している方にとっても、他人事ではないテーマといえます。
そもそも「盛土規制法」とは?
正式名称は「宅地造成及び特定盛土等規制法」、通称盛土規制法といいます。2023年(令和5年)5月26日に全面施行された比較的新しい法律で、宅地・農地・森林など土地の用途にかかわらず、盛土によって周辺の人家などに被害を及ぼすおそれのある区域を、都道府県知事等が”規制区域”として指定できるようにしたものです。規制区域内で一定規模以上の盛土・切土(きりど:傾斜地などを削って平らにする工事)を行う場合は、都道府県知事等の許可が必要になりました。以前は都道府県や市町村ごとにバラバラだった規制が、この法律によって全国一律の基準でチェックされるようになっています。

実家を建てたのはもう40年近く前なので、当時の造成が今のルールに合っているかなんて考えたこともなかったです。

多くの方がそうだと思います。ただ、この法律は”新しく盛土をする人”だけでなく、すでにある土地の所有者にも関係するルールが含まれている点に注意が必要です。
「知らなかった」では済まない?土地所有者の責務と罰則
盛土規制法では、盛土等が行われた土地について、土地の所有者や管理者が、その土地を安全な状態に維持する責務を負うことが明確化されました。過去に許可を得ずに造られた盛土や、老朽化して崩れる危険がある盛土がある場合、行政は土地の所有者だけでなく、実際に工事をした原因行為者に対しても、是正措置などを命令できます。この是正命令に従わなかった場合の罰則は、個人であれば懲役3年以下・罰金1,000万円以下、法人の場合は罰金3億円以下と、かなり重く定められています。「自分は盛土工事をしていないから関係ない」と思っていても、相続によって土地の所有者になった時点で、この責務も一緒に引き継ぐことになる点は押さえておきたいポイントです。

相続しただけなのに、そんな責任まで引き継ぐんですか…?

はい。ただ過度に心配する必要はありません。まずは実家の土地が規制区域に該当するかどうかを確認するところから始めれば大丈夫です。
売却前に確認したい3つのポイント
①自治体の規制区域図で確認する
都道府県や政令指定都市のホームページでは、盛土規制法に基づく規制区域を示した図面が公開されている場合があります。まずは実家の住所が区域内に入っていないかを確認してみましょう。
②過去の造成履歴を確認する
古い分譲図面や工事の記録が残っていれば、いつどのように造成されたかがわかります。書類が見当たらない場合は、近隣で長く住んでいる方に当時の様子を聞いてみるのも一つの方法です。相続した実家にシロアリ・雨漏りの跡が…黙って売ると後悔する理由とは?でも触れているとおり、建物や土地の”見えない不具合”は、査定や告知事項の観点から早めに把握しておくことがトラブル回避につながります。
③不安な場合は査定と合わせて専門家に相談する
規制区域への該当や盛土の安全性は、素人目には判断が難しいこともあります。擁壁のある一戸建ての査定で気をつけたいポイントと解決策で紹介しているように、土地の安全性に関わる要素は査定額にも影響することがあるため、不動産会社に査定を依頼する際に、あわせて確認してもらうと安心です。また、実家をしばらく放置している場合は実家が”管理不全空き家”になるとどうなる?固定資産税が急に上がる前に確認したいこともあわせてご確認ください。
まとめ:古い実家の土地こそ、早めの確認を
盛土規制法は、私たちの身近な災害リスクを減らすためにできた比較的新しいルールです。相続した実家の土地が古い造成地であるほど、盛土の存在に気づかないまま所有者になっているケースは珍しくありません。「知らなかった」では済まされない責務や罰則が定められている以上、まずは規制区域に該当するかどうかを確認することが、安心して売却を進めるための第一歩になります。気になる点が見つかった場合も、一人で抱え込まず、早めに不動産の専門家に相談することをおすすめします。
※本記事の内容は、国土交通省「盛土・宅地防災:盛土規制法の概要」(2023年5月26日施行、2026年9月時点の掲載情報)および総務省消防庁「令和3年7月静岡県熱海市土石流災害」の記録を参考にしています。
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