実家の共有者と連絡が取れない…それでも売却できる?2023年民法改正の新制度

実家の共有者と連絡が取れない…権利関係・境界トラブル

「実家の共有者と、もう何年も連絡が取れていない」——そんな不安はありませんか?

親から相続した実家が、兄弟姉妹など複数人の「共有名義」になっているものの、そのうちの一人と長年連絡が取れない——。転居先が分からない、音信不通になっている、あるいは疎遠になった親族の消息を誰も把握していない、というご相談は実は少なくありません。不動産は共有者全員の同意がなければ売却できないのが原則のため、「一人と連絡がつかないだけで、実家がずっと”訳あり”のまま塩漬けになってしまうのでは」と不安に思う方も多いでしょう。この記事では、そうした「所在等不明共有者(しょざいとうふめいきょうゆうしゃ)」がいる実家を売るための新しい制度と、その仕組みを分かりやすく解説します。

実家が兄と私の共有名義なのですが、兄とはもう10年以上連絡が取れていません…。このままだと、実家は一生売れないままなのでしょうか?

こだせんせい
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以前ならそう諦めるしかないケースもありました。ですが2023年に始まった新しい制度を使えば、行方の分からない共有者がいても、実家を売却できる道が開けることがあります。今日はその仕組みを一緒に整理していきましょう。

なぜ共有者が一人でも連絡不通だと、実家を売れないのか

実家のような建物・土地を複数人の名義で所有している状態を共有名義(きょうゆうめいぎ)と呼びます。以前の記事「共有名義の実家、兄弟の同意が得られない…自分の持分だけを売ることはできる?」でも触れたとおり、共有名義の不動産を丸ごと売却するには、民法上、共有者全員の同意が必要です。誰か一人でも反対すれば売却できませんし、そもそも連絡が取れず意思確認すらできない共有者がいる場合も、法律上は「同意を得ていない」のと同じ扱いになってしまいます。

連絡が取れない共有者が生まれる背景はさまざまです。相続をきっかけに疎遠だった親族と共有者になった、転居を繰り返して住民票の異動先を誰も知らない、あるいは共有者自身がすでに亡くなっていて、その相続人が誰なのか把握できていない、というケースもあります。こうした共有者のことを、法律上は「所在等不明共有者」と呼びます。

探偵を雇って探さないといけないんでしょうか…?正直、そこまでの費用も時間もかけられません。

こだせんせい
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個人で捜索する必要はありません。住民票や戸籍の附票などを調査した上でも所在が分からなければ、地方裁判所を通じた手続きに進めるのが、今回ご紹介する制度です。

2023年の民法改正で新設された「持分の取得・譲渡権限」の制度とは

所有者不明の土地・建物が増えている社会問題を受けて、2021年に成立した民法等の改正法により、2023年4月1日から新しい制度が始まりました。所在等不明共有者がいる場合、他の共有者が裁判所に申し立てることで、次の2つの方法のいずれかを利用できるようになったのです。

  • 持分の取得(民法262条の2):所在等不明共有者の持分を、他の共有者が(時価相当額を支払うことで)取得できる制度
  • 持分譲渡権限の付与(民法262条の3):共有者全員(所在等不明共有者を含む)の持分を、まとめて第三者に売却できるよう、裁判所が他の共有者に譲渡の権限を与える制度

実家を「今後も誰かが住み続ける・貸す」予定がなく、共有関係そのものを解消してしまいたい場合は、共有者自身が持分を取得したうえで、単独名義にしてから売却するのが分かりやすい流れです。一方、実家を早く現金化したい、共有者間で持分を取得する資金の準備が難しいという場合は、譲渡権限の付与を使って、所在等不明共有者の持分も含めて第三者(買主)へまとめて売却する方法もあります。以前の記事「実家を兄弟の一人だけが引き継ぐには?”代償分割”の決め方と代償金が払えない時の対処法」でご紹介した代償分割の考え方とあわせて検討すると、選択肢を整理しやすくなります。

手続きの大まかな流れとかかる期間の目安

手続きは、実家の所在地を管轄する地方裁判所への申立てから始まります。大まかな流れは次のとおりです。

  • 他の共有者が地方裁判所に申立てを行う
  • 裁判所が一定期間、公告(掲示による周知)を行い、所在等不明共有者本人や利害関係人からの届出を待つ
  • 期間内に届出がなければ、持分の時価相当額を供託したうえで、裁判所が取得・譲渡権限付与の裁判を行う

この異議届出の公告期間は、法律上3か月を下ってはならないと定められています。そこから裁判所の審理・決定までを含めると、申立てから解決までには数か月から半年程度を見込んでおく必要があります。急いで現金化したい事情がある場合でも、この期間は短縮できない点には注意が必要です。また、持分の時価をどう算定するかによって供託額が変わってくるため、不動産の現在の価格帯を早い段階で把握しておくと、資金計画も立てやすくなります。

半年くらいはかかるんですね…。費用の方も気になります。

こだせんせい
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申立ての手数料や公告にかかる費用に加えて、不動産の時価を裏付けるための鑑定費用、そして持分を取得する場合はその時価相当額の供託金も必要になります。次はその点を含めた注意点を見ていきましょう。

制度を使ううえで押さえておきたい注意点

この制度は便利な反面、いくつか押さえておくべき注意点があります。まず、持分を取得しても、所在等不明共有者への支払い義務そのものがなくなるわけではありません。供託した金額が、原則としてその共有者に対する支払いに充てられるという位置づけであり、後から本人が現れて権利を主張してくることも制度上は想定されています。また、住民票や戸籍の附票などを取り寄せて「所在が分からないこと」を調査し、その資料を申立て時に裁判所へ提出する必要があるため、事前準備にも一定の時間がかかります。

さらに、共有者の中に行方不明ではなく、単に売却に反対している人がいる場合は、この制度の対象にはなりません。その場合は、共有物分割請求など別の法的手続きを検討することになります。「連絡が取れないのか」「連絡は取れるが同意が得られないのか」を最初に整理しておくことが、適切な手続きを選ぶための第一歩です。判断に迷う場合は、早めに弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。

うちの場合、本当に「連絡が取れない」だけなのか、まず確認するところから始めないといけなさそうですね。

こだせんせい
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そのとおりです。あわせて、実家に今どのくらいの価値があるのかを把握しておくと、供託額の見立てだけでなく、共有者間での話し合いの土台にもなりますよ。

まとめ:「連絡が取れない」は、売却をあきらめる理由にならない

共有者の一人と連絡が取れないというだけで、実家の売却を最初からあきらめてしまう必要はありません。2023年に始まった所在等不明共有者の持分取得・譲渡権限付与の制度を使えば、地方裁判所の手続きを経て、実家を単独名義にしたり、共有者全員分をまとめて売却したりする道が開けます。ただし、公告期間を含め解決までに数か月から半年程度の時間がかかること、供託金や鑑定費用などの実費がかかることは、あらかじめ見込んでおく必要があります。まずは住民票や戸籍の附票で所在を調査するところから始め、あわせて実家の現在の価格帯を無料査定で確認しておくと、その後の資金計画や共有者間の話し合いを進めやすくなります。

※本記事の内容は、法務省が公表する民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号、2023年4月1日施行)に関する解説資料(2026年9月時点)を参考にしています。

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