相続した実家が空き家のまま、庭の手入れもできずに庭木が伸び放題になっている――そんな方は少なくありません。久しぶりに様子を見に行ったら、隣の家との境界からはみ出すほど枝が伸び、剪定業者に見積もりを取ったら思いのほか高額で驚いた、という声もよく聞きます。空き家の庭木は、放っておくほど費用もリスクも大きくなっていきます。この記事では、剪定費用が膨らむ理由と、庭木が引き起こす近隣トラブル、そして放置を続けた場合に行政からどう見られるのかを、わかりやすく整理します。

実家の庭を久しぶりに見に行ったら、庭木がすごく伸びていて…植木屋さんに剪定をお願いしたら、思っていたよりずいぶん高い見積もりで驚きました。庭木ってそんなに費用がかかるものなんですか?

それは珍しいことではありません。空き家の庭木は、数年放置するだけで高さや枝の広がりが一気に増し、剪定費用が跳ね上がりやすいんです。今日は、その理由と、庭木が引き起こす近隣トラブル・行政指導のリスク、そして今からできる対策を一緒に見ていきましょう。
なぜ空き家の庭木は剪定費用が跳ね上がりやすいのか
庭木の剪定費用は、木の高さや本数、作業のしやすさによって大きく変わります。人が住んでいる家であれば、庭木は毎年か数年に一度こまめに剪定されるため、費用を抑えやすいのが一般的です。しかし空き家になり数年手入れをしないと、枝が高く伸びて高所作業車が必要になったり、隣地や道路にまで枝がはみ出して伐採の難易度が上がったりして、同じ庭木でも剪定費用が数倍に跳ね上がることがあります。さらに空き家は人の出入りがないため庭木の状態に気づきにくく、剪定を依頼しようと思った時点で、すでに高木化が進んでしまっているケースも多く見られます。
剪定費用だけでなく、伸びた枝や落ち葉の掃除、害虫駆除なども必要になれば、その都度費用がかかります。空き家を所有している限り、庭木の管理費用は毎年のように発生し続けます。これは、固定資産税や火災保険料と同じく、空き家を持ち続けることで積み重なっていく”見えにくいコスト”のひとつです。
庭木の管理費用がこれからも積み重なっていくことを考えると、一度実家の今の価格帯を確認しておくのも一つの方法です。
空き家の庭木が引き起こす近隣トラブルとは
庭木を放置して困るのは、所有者本人だけではありません。枝が隣の敷地に伸びて越境すれば、隣人との関係が悪化する原因になります。2023年4月1日に施行された民法改正では、隣地に伸びてきた竹木の枝について、一定の条件を満たせば所有者自身が切り取れるようになりました(民法233条)。この新しいルールについては、以前の記事「実家に隣の木の枝が越境していたら?自分で切除できる新ルールと売却前の注意点」で詳しく解説しています。隣人に自分で切られてしまう前に、所有者側できちんと管理しておくことが望ましいでしょう。
また、伸びた庭木は毛虫やハチなどの害虫が発生しやすく、近隣から「虫が増えて困る」といった苦情が寄せられることもあります。落ち葉が隣家の敷地や雨どいに溜まり、トラブルに発展するケースも珍しくありません。こうした苦情が自治体に寄せられると、空き家の管理状態そのものが行政の確認対象になることがあります。
放置を続けるとどうなる?空家法上のリスク
庭木の手入れが行き届かない状態が続き、自治体への相談や通報が増えると、空き家は「管理不全空き家」(そのまま放置すれば特定空き家になるおそれがある空き家として、2023年の空家法改正で新設された区分)として、自治体から助言や指導を受ける可能性があります。管理不全空き家として市区町村長の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(住宅用の土地の税額を軽減するしくみ)が解除され、土地の税負担が最大6倍程度まで増えるケースがあると言われています。この仕組みについては「実家が”管理不全空き家”になるとどうなる?固定資産税が急に上がる前に確認したいこと」で詳しく説明していますので、あわせてご確認ください。さらに状態が悪化し「特定空き家」に指定されれば、行政代執行による強制的な解体と、その費用の請求にまで発展するおそれもあります。
庭木が倒れたり、大きな枝が落下したりして近隣に被害が出た場合は、所有者が損害賠償責任を問われる可能性もあります。空き家の管理責任については「空き家が倒壊してお隣に被害が出たら?知らないと怖い所有者の損害賠償責任とは」でも触れていますので、こちらもご参照ください。

庭木だけの話だと思っていたのに、税金や損害賠償まで関係してくるんですね…。正直、自分で手入れを続けるのは大変そうです。

そうなんです。庭木の管理は地味に見えて、実は空き家全体のリスクにつながる部分です。だからこそ、無理に自分だけで抱え込まず、選択肢を広げて考えることが大切ですよ。
庭木トラブルを防ぐためにできること
空き家の庭木トラブルを防ぐ方法はいくつかあります。まず、剪定業者やシルバー人材センターなどに定期的な剪定を依頼し、高木化する前に管理を続ける方法です。年に1〜2回の定期契約にしておけば、1回あたりの費用を抑えやすくなります。また、自治体や民間の「空き家管理サービス」を利用し、庭木の点検や簡単な手入れを含めて見守ってもらう方法もあります。
一方で、今後も空き家として維持していくのか、それとも売却するのかを早めに決めておくことも大切な選択肢です。庭木の管理費用は、空き家を持ち続ける限り毎年発生し続けます。売却すれば、剪定費用や将来の税負担の心配から解放されます。すでに売却を考えているなら、まずは今の状態でどのくらいの価格になるのかを把握しておくと、今後の判断がしやすくなります。
まとめ:庭木の手入れまで手が回らないなら、早めに実家の状態を把握しておこう
空き家の庭木は、数年放置するだけで剪定費用が跳ね上がりやすく、隣地への越境や害虫、落ち葉といった近隣トラブルにもつながります。さらに管理が行き届かない状態が続けば、管理不全空き家や特定空き家への指定、固定資産税の増額、損害賠償責任といった大きなリスクに発展するおそれもあります。庭木の手入れまで手が回らないと感じたときは、それ以上一人で抱え込まず、売却も含めた選択肢を早めに検討することをおすすめします。
※本記事の内容は、国土交通省・総務省が公表している空家等対策の推進に関する特別措置法および固定資産税の住宅用地特例に関する資料、杉並区など自治体の民法改正(隣地の竹木の枝の切除)に関する案内(いずれも2026年10月時点の公開情報)を参考にしています。
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